永遠の人気者、
ムーミン一家

ムーミンの精神は、トーヴェ・ヤンソンの作品に影響を受けた芸術家や職人の作品の中で生き続けています。

文と写真:Laura Iisalo

紙からマグカップに

ムーミンの磁製マグカップがどのくらい人気を集めるのか、予測できる人はだれもいませんでした。数々のカラフルな作品を手がけてきたグラフィックデザイナーのTove Slotteでさえ、どうなるのかは分かりませんでした。 フィンランドの陶器会社、アラビアは、販売されたマグカップの正確な数は明らかにしてくれませんが、その数が何百万にものぼることは認めています。 ピンクの「ラブ」マグは最も人気があり、1996年から製造され続けています。一部の特別限定販売品は収集家に人気のアイテムになり、オークションでは6,000ユーロという高値で取引されることもあります。

毎年4個ほどのマグカップが新しく発売されますが、デザインの工程はその2年前から始まります。 Slotteにとっての創作プロセスは、手でデザインを描く前に、全作持っているトーヴェ・ヤンソンの本のページをめくってぴったり合ったイメージのコラージュを作ることから始まります。

Slotteは、27年前に最初に仕事の依頼を受けたとき、すばらしい機会を得たのだとは分かっていましたがとても緊張したことをまだ覚えています。「私はヤンソンをとても尊敬していたので、彼女のイラストを使って何か作るなど恐れ多くてできないと思いました。 初めはイラストにさわることさえできなかったほどです」と彼女は言います。 今でもSlotteは、新しく何か創造するときは、いつも同じような興奮を感じるといいます。「トーヴェ家にはヤンソンの原画を常に使用すると約束しましたが、それを自分に思い出させるまでもなく、私はムーミンの原画が好きなんです。それから何年もたちましたが、いまだ新しい演出を思いついて楽しんでいます」。

たいまつを渡す

大きな庭にリンゴの木が20本ある家のアトリエで仕事をするSlotteは、静かで穏やかな環境を享受しています。いいアイディアが浮かぶのは、たいてい近くの森で犬をの散歩をしているときです。「23年前この田舎に引っ越してきたとき、ジャムやジュースをたくさん作り始めました。まだ子どもたちが小さかったので、ムーミンママにはほんとうに共感が持てました」と回想します。

コアなムーミンファンであるSlotteは、初めてヤンソンの本を読んだときのことを思い出すと暖かい気持ちになります。「母が『The Book about Moomin, Mymble, and Little My』をくれました。ページ全部に小さな切り抜きが入っていて、 私はすぐに夢中になりました。まだ物語のほとんどをそらで言えます。キャラクターたちの絵を描いていたことも覚えています。

ムーミンへのいつくしみは、Slotteの2人の子どもたちにも受け継がれました。子どもたちはSlotteが子ども時代に聞いた物語と同じものを聞いて育ち、長女のHanna Elevantは、去年の夏SlotteのスケジュールがぱんぱんになったときSlotteを助けて支えました。「いつも1人で働くことに慣れていたので、娘と協力しながら仕事をするのはなかなかよかったです。娘は、私の仕事は本当に楽しいと言ってくれて、とてもうれしく思いました」。

Tove Slotte

  • フリーランスイラストレーター兼陶芸家
  • アラビア社が販売するムーミンのマグカップ73個は、Slotteがトーヴェ・ヤンソンの原画を基にしてデザインしたものです。
  • Karjalohjaでの生活と作品
  • ムーミン一家の教え:「ムーミンの仲間たちはいつでも新しい冒険の準備ができている。でも、家はいつでも戻れる場所。安心感があるのはいいもんさ。」

ムーミンのマグカップはこちらのサイトでご覧ください。arabia.fi

ムーミンの作品の親代わり

フィンランドのタンペレで近々開館する新しいムーミン谷博物館の準備で、館の管理者Eija Kangasmäki-Kurttiは多忙です。 トーヴェ・ヤンソンのオリジナル作品約2,000点もの数を誇るコレクションの多くは、Kangasmäki-Kurttiによって巧みに管理されています。

館の管理者には、強い忍耐力、細かいところまで行き届く目、強い意志が要求されます。「見学に来る人々に一番喜ばれるものは何かを考えるだけでなく、展示に最適なものは何かについても考えなければなりません。 ムーミンのイラストはとても人気があるので、作品貸出しのリクエストを断らなければならないことも少なくありません。 輸送中に作品が傷む可能性もありますし、光、熱、湿気のある環境にさらしても作品は傷みます。それを防ぐのが私の務めです」とKangasmäki-Kurttiは語ります。

ムーミンの本に使うために描かれ、後にタンペレ美術館に寄贈された、ヤンソンの膨大なイラストを維持することは片手間ではできない仕事です。この仕事の難しいところは、どの方法が長期保存に最適なのかを見極めることです。「変色を防ぐために紙を漂白することは今は良い方法に見えるかもしれませんが、作品の寿命が短くなります。将来の世代もこれらの作品を見られるようにしておくこともとても重要なのす」。

運搬中のボディーガード

保全という観点から見てとくに大変な課題の要因の1つに、ヤンソンが原画を酸性度のかなり高い紙に貼り付けたことがあります。Kangasmäki-Kurttiは、茶色の斑点が発生するのを防ぐために、絵の分離と洗浄に数時間を費やしました。 彼女が主に目指していることは、元のアートワークを復活させたり変えたりすることではなく、現在の状態で作品を安定させることです。「ペイントが剥がれたためにキャラクターの詳細が欠けていても、私は描きなおしたりはしません。それはもうトーヴェ・ヤンソンのオリジナルではなくなるからです。 私がするのは、残っているペイント部分を再びくっつけて、また損傷するのを防ぐことです」とKangasmäki-Kurttiは言います。

ムーミンの作品は世界中で定期的に展示されていますが、Kangasmäki-Kurttiはすべてが安全に進められるようにいつも同行するといいます。これらのアートワークに10年間も密接にかかわっていると、自身への影響力が大きいと彼女は語ります。 Kangasmäki-Kurttiは、作品の背景にある歴史を理解するためにヤンソンの本を数多く読んできましたが、学べば学ぶほど自身の中での作品の価値が大きくなるといいます。「かかわっている作品の背景にある物語に詳しくなると、その作品は単なる仕事としての存在以上になります。ムーミンたちは現実の生き物を基にしたキャラクターなのです。今では自分の子どもたちであるかのように思い入れがあります」。

Eija Kangasmäki-Kurtti

  • タンペレ美術館の管理者
  • 博物館に寄贈されたムーミンの原画はTove Janssonによって管理されています。
  • タンペレでの生活と作品
  • ムーミン一家の教え:「漫画ではムーミンたちのとても現実的な側面を見られます。私ももっと気楽に生きればいいのだと気づかされます。」

ムーミン谷博物館の詳細は、こちらをご覧ください。tampereartmuseum.fi

スナフキン、ピタゴラスに出会う

自らムーミンの熱狂的ファンであると宣言するAnne Pasoは、その情熱を充足感いっぱいのビジネスに変えました。芸術と論理を組み合わせることが得意な工業デザイナーのPasoは2001年、小さな合板を楽しい立体フィギュアに組み立てられる方法を発明しました。「数学が大好きで、ピタゴラスの定理を使って組み立て方法を完成させました。フィンランドで製造できて、地元の木材で作る製品にしたいと思っていました」とPasoは語ります。

最初のLovi製品は、クリスマスツリー用のさまざまな形をした木製の飾り物でした。小球、ハート、天使、トナカイ、木、小さな子豚がぴたっと平らに収まって葉書にもなるというものです。 Pasoはこの発明の可能性の大きさに気づいて、現在もLovi製品開発の要となっている組み立て方法の特許を取得しました。

Pasoはよく、新しいアイディアが出てこなくなったらムーミンたちと一緒にビジネスを始めると冗談を言っていました。そしてそれは現実のものとなりました。アイディアが出てこなくなったからではなく、2011年の大地震とそれによる経済界の大打撃のために事業を失いそうになった経験のある日本市場に再び参入するという形で。「競争の輪の中に戻るためには、画期的なアイディアを考えなければなりませんでした。私はずっとトーヴェ・ヤンソンの本とイラストが大好きで、あの絶妙に調和している文と絵にあこがれていました。木製のキャラクターは私自身がシンプルに演出したものですが、同じ精神を表現するということを大切にしています」。

小さな木製のメッセンジャー

ムーミンの最初のフィギュアが発売されたのは2012年ですが、今では全部で7種類が販売されています。 ちびのミイが一番の売れ筋ですが、Pasoが個人的に気に入っているのはスナフキンです。この小さな哲学者にはあまりにもこだわりすぎて、木製の細かい切り抜きを15個使って造る準備が整ったと感じるまで、しばらく時間を置かなければならなかったといいます。「私たちには共通点が多いんです。彼は自由な精神の持ち主で、他人が彼についてどう思うかなんてまったく気にかけません。あちこちをさまよっていますが、どこに行っても気楽に過ごしています」。

Pasoは、木製のキャラクターたちは、ムーミン風の暮らし方についてもっと知りたいと人々に思わせるる小さなメッセンジャーだと感じています。「人々がヤンソンのすばらしい本を読んで、ムーミンの哲学を深く掘り下げて行くようになればいいなと思っています。ムーミンの哲学は、とても受け入れられやすく、寛容で、精神的にも洗練されています。 人生ではいろんなことが起こりますが、いつだって最後にはどうにかなるんです」と彼女は言います。

Anne Paso

  • 工業デザイナー兼Lovi創業者
  • 合板を使ってムーミンのオリジナルキャラクターに基づいた立体フィギュアを作っています
  • オウルでの生活と作品
  • ムーミン一家の教え:「スナフキンによると、だれかを崇拝しすぎると、ほんとうの自由は得られない。同感。」

詳細は、こちらをご覧ください。lovi.fi

この記事はフィンエアーの機内誌「Blue Wings」2017年2月号に初めて掲載されました。

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