トレンドに乗るフィンランドのホテル


トレンドに乗るフィンランドのホテル

好奇心旺盛で経験豊富な旅人は、薄型テレビごときでは喜びません。ミレニアル世代の旅行者のニーズに応えるクリエイティブなフィンランドのホテル4軒を訪ねました。

好奇心旺盛で経験豊富な旅人は、薄型テレビごときでは喜びません。ミレニアル世代の旅行者のニーズに応えるクリエイティブなフィンランドのホテル4軒を訪ねました。

 

文:シリヤ・キューデル、
写真:ヴィレ・パローネンおよびホテル

盆栽の横でヨガマットを敷いて蓮のポーズをとる人がいます。また別の人は、厚手のニットの靴下を履いてコーヒーバーのすぐそばにぶら下がるコクーンチェアでお代わり自由のコーヒーと無料のマシュマロをつまみながらネットサーフィン中。木目とロープカーペットが穏やかに融合する内装は、北欧人がこだわる「ヒュッゲ(居心地のよい空間)」を体現しています。

流行に敏感な人のリビングで過ごす日曜の午後といった気分かもしれませんが、これは活気あるホテルで迎える月曜の朝の風景です。ただし、ありふれたホテルとは違います。学生街のタンペレにあるドリームホテルは、ヴィレエヴェリーナが経営するブティックスタイルのゲストハウス。同じ建物にあるドミトリータイプのドリームホステルを少しおしゃれにバージョンアップしたものです。

注目を集めようと躍起になる昨今のホステル業界で、新たに登場したこの小さな施設が控えめなスタイルで関心を引いています。ドリームホテルは先ごろ、イギリスのタブロイド紙デイリーメールでヨーロッパのポシュテル(ハイグレードなホステル)のベスト10に選ばれました。

ヒュッゲに包まれて

ドリームホテルは、ホスピタリティ業界における上昇傾向を実証しています。それはつまり、スタイルと快適さ、コネクティビティを犠牲にすることなく、未開拓の道を求めるミレニアル世代のニーズを満たしているということです。

スタジオプイストの建築家によって、古い倉庫がコンパクトなスイート20室に生まれ変わりました。至る所に使われているニュートラルな色調と自然素材が暖かな雰囲気を醸し出しています。大胆で実験的な空間の使い方でありながら、非の打ちどころのない快適な客室は、心地よい眠りに必要な条件を満たしています。

「ミレニアル世代の旅行者に、大がかりなミニバー付きの50㎡の部屋は無用の長物。外で交流したがりますから。部屋のサイズを縮めて、椅子とテーブルを廊下に出すことにしたんです。」と話すヴィレ。

「今の旅行者は特別な魅力を求めています。必要なのは、膨大な予算ではなく創造力です。」エヴェリーナは、ゲスト用のマフィンを焼いた後、手に付いた粉を払いながらこう語りました。みんなでジンジャーブレッドを焼いたり、木曜には豆のスープ、雨の日にはポップコーン(タンペレは雨が多いため)の無料サービスがあったり、お楽しみがいろいろあります。

オープン当初、ヴェルッキ夫妻はホスピタリティ業界での経験はありませんでした。あったのは、バックパッカーとしての経験に基づいた明確なビジョンだけです。

「ミレニアル世代の旅行者のニーズには共感できるんです。細かな部分にも手を抜きません。何より嬉しいのは、本格的な旅行者に「かゆいところに手が届く」と言われることです。」とヴィレは言います。

新たなプレジデント

最先端のホテルとしてもてはやされるかどうかに、建物の新しさは関係ありません。古い建物でさえも、新世代旅行者の心理的推進力と同調して伝統の殻を破ろうとしています。

「紛れもなくクール」と聞いてオリジナルソコスホテルプレジデンティを連想する人はあまりいませんが、それも変わろうとしています。ヘルシンキのパーティーの中心地を象徴するこの建物は、最先端のライフスタイルブランド「イヴァナヘルシンキ」を陰で支える多才なアーティスト、パオラ・スホネンによって全面的なイメージチェンジを図っています。

普通を超越するもの。「北欧のツインピークス」と称されるスタイルを持つデザイナーに期待されるのは、そんなものではありません。

「フィンランドは、5つ星の豪華さでは勝ち目がありません。だから勇気を出さないと。経験豊富な旅行者は驚きを求めているんです。」とスホネン。

「プレジデンティにはクールなオーラがあります。新しいカーテンセットなんかじゃなく、実験的なものを使って歴史を呼び覚ましたかったんです。新たなコンセプトはストーリー性です。」と説明してくれました。

スホネンはデザイン会社のKOKO3と提携し、5階層にわたり約500室のリフォームを手掛けました。どの部屋も独自のフィンランドテーマが自慢です。

「フロアごとにテーマを変えました。真冬の吹雪だったり真夏のパーティーだったり、エレベーターを降りたらまるで別世界みたいですよ。」

自撮りチャンス

快適さと地元色を併せ持つ客室を彩るカラフルなラグマット、壁紙、カーペット、コーヒーテーブル、シャワーカーテンはどれも、手作りの懐かしい雰囲気を出すためにスホネンが特別にデザインしたものです。

「今の時代、ホテルはどこも似たり寄ったり。自分がいるのがバンコクなのかニューヨークなのか、窓の外を見ないと分からないんです。ちょっと型破りな方法で「これぞフィンランド」と伝えるコンセプトを作りたかったんです。」とスホネンは説明してくれました。

各部屋でひときわ目立つのは、手で房を付けたウォールラグ。不評だったこともあるフィンランドの伝統的アイテムですが、近年また見直されるようになりました。「砕氷船や巨大な蚊など、ストーリー性のあるビジュアルをプラスしました。フィンランドの国獣を肩に載せてセルフィーを撮影することもできますよ。」と笑いながら語ります。

「プレジデンティは、フィンランドで唯一、特注デザインのアイテムを備えたホテルです。パイミオのサナトリウムなどの有名建築物の照明器具からドアノブまでをアルヴァ・アールトが手がけた、フィンランドデザインの黄金時代を彷彿とさせるでしょう。本物のデザインが帰ってきたんです。ただの安ホテルじゃ注目は集められません。」とスホネン。

空を泳げば

高さに限って言えば、「突出する」のは、クラリオンホテルヘルシンキならお手のもの。

地上16階にある温水プールに飛び込んでみてください。これほどめまいがするような体験はほかにはありません。プールの西側の壁がガラス張りになっているため、水中からも眼下に広がる景色が一望でき、まるで空の上を泳いでいるような気分が味わえます。

屋上のプールの隣には、リクライニングチェアが並ぶデッキとスカイルームがあり、宿泊客が海抜78メートルの高さでカクテルを楽しんでいます。ヘルシンキの高層ビル群の中に建つこのホテルでは、ガラス張りのタワーと透明な歩道橋から壮大な景色を眺めることができます。

クラリオンホテルヘルシンキとクラリオンホテルヘルシンキエアポートを合わせて、ド派手なオープニングセレモニーをすることで悪名高いノルウェーの億万長者、北欧屈指のホテル王ペッター・ストルダレンによる「フィンランド侵略」とも言われています。

「確かに、革ジャンも華々しい演出も大好きだからね。」といたずらっぽく笑うストルダレン。「ホテルのファサードをラペリングする僕の姿を目撃するかもね。いや、実は高所恐怖症なんだけど。真の北欧品質でホテルを運営するのが僕の日常なんだ。」

ソフィとクラビング

熱心な美術品収集家でもあるストルダレンの好みは、様式美より現代アートです。オスロにあるザ シーフは、世界で唯一、専属アートキュレーターを抱えるホテルです。クラリオンホテルヘルシンキにはひときわ目立つアート作品が飾られています。ロビーには、作家のソフィ・オクサネンの巨大な肖像画をはじめとするサミ・ルッカリネンによる絵画もあります。

ソフィ・オクサネンがにらみを利かせる下で、ライブDJがクラブ風の雰囲気を醸し出し、ウルヨ・クッカプロのカルーセルチェアやアルヴァ・アールトのゼブラ柄のタンクチェアで宿泊客がくつろいでいます。

「素晴らしいホテルには物語があります。クラリオンホテルヘルシンキにはフィンランドデザインの歴史が展示されていますが、ここは博物館ではありません。ヘルシンキを訪れるすべての人たちにとって、楽しいリビングルームであってほしいんです。」とストルダレンは語ります。

ガルボとカクテルを

クラリオンが見た目の壮大さにこだわる一方で、小さなブティックホテルは別の方法で注目を集めようとしています。ホテルリッラロバーツでは、ロビーの暖炉のそばに実物大の馬の石膏像が立ち「趣の違いに備えよ」と告げているかのようです。馬の口から出る言葉に嘘はありません。この一風変わったブティックホテルは、言うなればヘルシンキの真ん中に突如現れたグレートギャッツビーの一場面です。

大胆な幾何学模様、動物モチーフの照明器具、黄金のアクセント、アールデコ調の装飾など、リッラロバーツはまるで北欧の「ヒュッゲ」を帯びたジャズエイジ。ロビーバーでは、毛皮のストールではなく気楽なジーンズ姿のグレタ・ガルボがカクテルをすする姿が容易に思い浮かびます。

「歴史的な外観とモダンな感覚を巧みに組み合わせ、北欧の心地よさをアールデコの豪華さへと昇華させています。リッラロバーツには、個性的なデザインを評価するファッションやコスメ、広告などの業界人が数多くいらっしゃいます。」と語るのは、総支配人のカティ・ヨウシミエスです。

バー「リッラエー」やレストラン「クロッグロバ」、夏のテラスは地元人気が高く、訪れた人の多くが、ホテルの中にいるということを忘れてしまいます。

犯人は執事だ

1909年に発電所として建てられ、後に警察署となったビルの中にあるこのホテル。アールデコ調の内装は、もともとあったロビーのまだら模様の床のタイルにヒントを得ています。

フーダニット(犯人探しを楽しむミステリー)をベースとしたゲームで秘密の暗号を解いていく「ミステリーディナー」など、クロッグロバのテーマイベントは、色彩豊かなホテルの歴史がインスピレーションの源です。

「警察署とアールデコの内装を組み合わせたら何が生まれると思います?そう、エルキュール・ポアロしかいませんね。」ヨウシミエスが笑顔で語ります。

ファッションショーやハロウィンパーティー、カクテルのワークショップなどクリエイティブなテーマイベントだけでなく、朝食のサジーやホテルのあちこち置かれたサルミアッキ(塩化アンモニウムとリコリスのお菓子)など、北欧ならではの特別なサービスで宿泊客を喜ばせています。

「しかも、サルミアッキと床のタイルが合うんです。お客様の笑顔が見たくて、ありとあらゆる工夫を凝らしました」と彼女は付け加えます。

ミニバーではなく新たな体験に飢えたミレニアル世代。SNSに精通し「観光客ではなく探検家であれ」をモットーとする彼らのレーダーに訴えるには、たくさんのサルミアッキであれ大胆なデザインであれ、ユニークなコンセプトが不可欠な要素となるのです。

個性的な宿泊施設5選

北天を仰げば

サーリセルカのホテルカクシラウッタネンでは、ガラス製のイグルーからオーロラを一望できます。勇敢な方は、本物の雪で作ったひんやり冷たいイグルーの宿泊施設に泊まることもできます。

灯台へ

大切に保存された6つの灯台守の部屋が、北欧一の高さを誇る灯台の宿泊施設、ベンクトゥシャールに生まれ変わりました。バルト海に浮かぶ岩だらけの孤島で嵐の夜を過ごせば、ムーミンの世界の冒険気分が味わえます。

畳でひと休み

予算内で日本の情緒が堪能できます。プッキラのポルボー川沿いの酪農場を再利用したヤドオイカワは、立地からは想像がつかないほど本格的な和風のゲストハウスです。

監獄行き

「普通」から脱却するなら、刑務所の独房を再利用した106室の客室を擁するホテルカタヤノッカへ。監獄時代の面影を残しつつ、独房とは比べ物にならない快適さを備えています。

なつかしの70年代

シャンパンを片手に木製パネルのジャグジーに浸かり、モダンとレトロの魅力の融合をご堪能ください。キルッコヌンミに位置するラングヴィクコングレス ウェルネスホテルは、銀行の訓練センターだった建物を再利用しています。


この記事はフィンエアーの月刊機内誌「Blue Wings」の2017年3月号に初めて掲載されました。

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